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    • 2014.08.26 Tuesday
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    マーチン・ファン・クレフェルト「補給戦」(中公文庫)覚書4(最終回)

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      前回http://nakamiya893.jugem.jp/?eid=3634の続き。やっと最終回です。

      P326L8「恐らく問題解決の唯一の方法は、アフリカ装甲軍からイタリア兵という役立たずの重荷を取りはずすことだったであろう」

      ひどい(;´Д‘)でも「イタリア軍イラネー。つーか邪魔」ってのは、軍オタの一般常識。ドイツ人と日本人が「次はイタリア抜きで勝とうぜ!」と盛り上がるのはよく見られる光景。イタリアが連合国に宣戦布告した際にはチャーチルが「これで勝てる!」と大喜びしたなんてことさえまことしやかに言われている始末。
      北アフリカ戦線を再現したゲームにおいても、こうしたヘタリアぶりを再現するための特別ルールがあったりして、余りにもイタリア虐待すぎて泣けます。
      暇な人は以下の動画でご確認を。

      ボードウォーゲームで見るヘタリア
      http://www.nicovideo.jp/watch/nm3513290

      P339L9「1940年の第二次世界大戦発生時には、ドイツ国防軍の無敵の戦車師団は、大部分マーク1型およびマーク2型の戦車から構成されていた――これらは教育用以外には使う予定のなかった小型戦車であった」

      開戦当初、まともにフランス軍戦車相手に戦車戦を戦えるドイツ戦車はマーク3型とマーク4型ぐらいでした。
      対フランス戦までのデータ。1型は武装は機関銃だけで、生産台数は600両ほど。2型も機関砲のみの武装で1000両ほど。対戦車砲を装備していた3型と4型はそれぞれ400両未満。それ以外に、併合したチェコスロバキアから奪った戦車(対戦車砲装備なんで1型や2型よりはるかに高性能)が700両近くありました。これを見ても、ドイツ軍によるフランス侵攻が、いかに鹵獲兵器や劣悪兵器で巧みになされたかが分かると思います。
      ちなみにフランス軍の戦車数は、対戦車砲装備の車両だけで合計2300両ほどです。
      ※レン・デイトン「電撃戦」(ハヤカワ文庫) P309表などより。
      蛇足ながら、有名なパンター(パンサー)戦車はマーク5型、ティーガー(タイガー)戦車はマーク6型です。
      これも蛇足ながら比較のために、陸上自衛隊の保有戦車数は新旧あわせて600両ほどです。昔の人って努力家だったんですね(;´Д‘)

      P341L6「以上のように準備が悪く、部隊は急いで寄せ集めたもので、しばしば間違った装備しか持っておらず、その場の判断で作戦開始を命じられた戦争に比べて、1944年6月フランスに進行した連合国軍は洞察力と組織の勝利を示した。この軍隊こそは自由に戦闘開始日時を決めることができ、あらゆる行動は二年間にわたって詳細に計画された」

      ここからは、「史上最大の作戦」とか「オーバーロード作戦」とか「Dデイ」などとして知られるノルマンディー侵攻作戦のお話です。ドイツに支配されたフランスに対して、連合国軍がイギリスからしこたま海軍と上陸用舟艇集めて上陸した反攻作戦です。映画「プライベート・ライアン」とかでも有名な、戦史上一般常識レベルの作戦ですので覚えておきましょう。
      でも、兵站計画は慎重すぎて大失敗だったよね!ってのがクレフェルトの主張です。何しろあの変態アメリカがあり余る生産力を投じて補給物資を死ぬほど投入し、捨てるほどあるトラックで輸送しまくったわけですから、歴史上かつて無いほど余裕のある計画だったにもかかわらず、ちょっとあんたら戦闘計画が慎重すぎというより無気力過ぎだったんじゃないの?ってのが彼の主張です。
      ちなみに「史上最大の作戦」などと呼ばれていますが、実のところこの後太平洋戦線において行なわれた沖縄上陸作戦こそが、実は真の意味で史上最大規模の作戦です。

      P342L15「要するに、1944年の連合国軍は恐竜ブロントサウルスに似ていた。もっともブロントサウルスの場合は身体に比較して脳が小さすぎたが、連合国軍はそうではなかった」

      以下余談。気になる人用。
      僕が子供の頃には恐竜図鑑などにおいては「ブロントサウルス」という恐竜は、体が巨大すぎるため、しっぽに怪我をしてもその痛みが脳に伝わるまで数十秒から数分かかる、なんて説明されていました。そうした不都合を避けるために、体のあちこちに副脳とでもいうべき組織が点在していた、なんて説明がされていたこともあります。クレフェルトのこの部分は、そうした説を受けての解説です。
      ただし、現在では「ブロントサウルス」なる恐竜の存在そのものが否定されているので、これらの俗説も今や過去のものとなっています。

      P346L3「なぎさを補うために二箇の人工桟橋を建設、それをバラしてイギリス海峡を引いてゆくことが決定された」

      ノルマンディー上陸作戦は、ただの浜辺に部隊を上陸させる計画でした。故に、輸送船で補給物資を運ぶためには、港を利用することができません。そのため、必要な港を占領するまでは、浜辺に「人工桟橋」を作ってしまいましょうってアホみたいなこと考えたわけです。この港は暗号名を「マルベリー(桑の実)」と言います。イギリスで予め数十トンもあるケイソンなんかを大量に作っておいて、作戦開始と同時に船で引っ張っていって、それらを沈めて人工のインスタント港を作ってしまおうというものです。現在でもノルマンディー海岸には、マルベリーの廃墟が残っているそうです。どれだけ巨大でアホみたいな計画だったかは、以下の英語のWikiの写真などをご参考に。

      Wiki Mulberry harbour
      http://en.wikipedia.org/wiki/Mulberry_harbour

      P348L5「イギリスから来航するリバティ型船舶への引き継ぎ」

      「リバティ型船舶」とはリバティ船とも言われる、いわゆる戦時急造型輸送船(戦時標準船)です。空母さえ毎週一隻作っていたヘンタイアメリカは、戦時中これだけでも2700隻以上作っちゃいました(これ以外にもヴィクトリー型とかもあってこれ合わせると6000隻!)。ヒドイ時は一隻作るのに3日しかかからなかったそうです。
      急造のため沈んだり沈んだり沈んだりと色々とトラブルもあったようですが、それらの教訓はタコマ橋崩落事故などと並んで、工学上の極めて重要な教訓事例となっています。
      ちなみに、日本も太平洋戦争中に約1000隻の戦時標準船を作ったことになっていて数だけは立派なものですが、その内情は非常にお寒いもので、粗製濫造のため小さいし遅いし故障するし勝手に割れて沈むしおまけにせっかく作ってもすぐに連合軍に沈められるしと、全くイイことなしでした。苦し紛れに帆船とかコンクリート船とかまで作っています。

      P357L2「モントゴメリーの第21集団軍は」

      戦史上一般教養レベルのイギリス軍人です。特に軍事学上際立った重要性は持ちませんが、ロンメルをアフリカで打ち破ったり、パットンとライバル意識燃やしあってトラブル起こしたり、史上最大級の空挺作戦でもある無謀なマーケット・ガーデン作戦を提案して大損害をもたらしたりと、色々有名な方です。
      イギリスの有名なコメディー番組「モンティ・パイソン」は、モントゴメリーの愛称である「モンティ」にちなんで名付けられました。

      P366L17「特に第三軍は、必要な物を手に入れようとする時、異常な方法を使うことで悪名が高かった」

      「第三軍」とは、既述の横暴なおっさん、パットン指揮下のアメリカ第三軍のことです。

      P374L17「アルンヘム作戦が開始されなかったとして」

      既述の「マーケット・ガーデン作戦」の別名です。映画「遠すぎた橋」でも描かれましたね。大規模な空挺部隊を主力とする部隊がオランダに侵攻し、現地の港を電撃的に確保して、補給線への負担を軽くしようとの意図で行われた作戦です。「バンド・オブ・ブラザーズ」などでも有名な、アメリカ第82空挺師団や、第101空挺師団(現在は空中機動師団に改編)などが参加し、大損害を受けました。ちなみにこの2師団は現在においてもアメリカ陸軍現役10個師団の中で緊急展開戦力として重要な地位を占めており、湾岸戦争やイラク戦争でも真っ先に現地に派遣され活躍しました。






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