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菊地成孔;大谷能生「アフロ・ディズニー2」(文藝春秋)覚書2

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    前回http://nakamiya893.jugem.jp/?eid=3648の続き。

    前回の補足。点線の範囲の文は、忙しい人は飛ばしてOK。「アニメがニコニコ動画などに落とし込まれるとMADが流行る」みたいな話があったんで。

    ―――――

    職人によるアマチュアレベルのMADについては本文中でも触れられていますが、実はここ数年日本のアニメ業界においては、制作会社レベルにおいても、MADとほとんど変わらない遊び的改編やおまけ映像を作っちゃうことがよくあります。
    特にDVDやHPなどには「映像特典」などと称して、本編のパロディーや「もう一つのありえた未来」的な作品が収録されることが当たり前に行われています。
    そうしたデータベース消費型、他作品参照型のお遊びに一番力を入れているのが、恐らく前回出てきた「らき☆すた」や「涼宮ハルヒの憂鬱」「けいおん!」などを作った京都アニメーションで、特典やおまけだけではなく本編においても頻繁にそうしたお遊びをやっちゃいます。

    有名な例として「らき☆すた」と「涼宮ハルヒの憂鬱」。
    もともと他作品のギャグ・パロディー要素の強いらき☆すたですが、両方共京アニ制作という利点を最大限に生かし、ハルヒのパロディーを良くやります。これは企画段階からの意図的なもので、らき☆すたの主人公であるヲタ女子高生泉こなたの声優には、涼宮ハルヒ役の平野綾を起用しています。
    そしてらき☆すたの中においてヲタであるところの泉こなたは、涼宮ハルヒの憂鬱好きで平野綾の大ファンと言う設定です(原作漫画には無い、アニメ独自の設定です)。そんでもって、平野綾(自分)のコンサートに行くエピソードや、涼宮ハルヒのコスプレをしてハルヒのEDを踊るエピソードなどがあります(両方共アニメ独自エピソード)。

    まずはらき☆すたの前に、涼宮ハルヒの憂鬱のネタ元から。

    涼宮ハルヒ 自己紹介
    http://www.youtube.com/watch?v=Pjbwgy-MBWk

    で、らき☆すたでは、泉こなたが涼宮ハルヒの衣装着て働くコスプレ喫茶に友人たちが遊びに行くという設定。

    コスプレ喫茶
    http://www.youtube.com/watch?v=_onKpOQSWDM

    途中で出てくる男子生徒と女子生徒の会話(「うな重ちょうだい」から「よし!やっちまえ!」まで)も、涼宮ハルヒの憂鬱に出てくる有名なシーンの再現になっていて、男子生徒はハルヒに出てくる「きょん」、女子生徒は「長門有希」(前回もP82で出てきましたね)をイメージしており、声優も実はハルヒに出てきた本人たちがやっている。
    こういうのがヲタ心を刺激するんですね。
    「よし!やっちまえ!」の元ネタシーンは下の動画の4分40秒あたりから。宇宙艦隊戦SLGでライバルクラブと戦うけどずるされちゃって…というお話し。このエピソード「射手座の日」自体も、銀河英雄伝説とかガンダムとかヤマトとか色々なネタが散りばめられている。

    涼宮ハルヒの憂鬱 戦闘シーン集(3)(エピソード「射手座の日」より)
    http://www.nicovideo.jp/watch/sm10483681

    多分こういう、制作サイドによるいわば公式MAD的なお遊びってのは、同じ映像メディアでも映画とかドラマとかだと余り頻繁にはやれないですよね。「キャラ」と「声優」が分離しているというアニメの特性なんかが非常に大きく影響していると思う。
    ―――――

    P124下段L14「ありますよ。『マクロス』。『マクロスFrontier』はもう最高。『マクロスF』で最近もう萌えてて」

    ガンダム(79年)後に、その多大な影響の元に鳴り物入りで作られた「超時空要塞マクロス」(82年)。この時期はガンダムに衝撃を受けたアニメ界が、様々な「ガンダム以後」作品を競って作っていた時期。そうした作品群が消えて行く中で、マクロスはガンダム同様未だに様々な続編が作られ、最新の「マクロスF」は08年に放映された。現在当たり前になっている日本のロボットアニメの各種技法を確立した重要な作品。でもロボット物としてのストーリーははっきり言って個人的にはクズだと思う。宇宙空母ギャラクティカのパクリにしか見えないし。ガンダム以前ならともかく、少なくともガンダム以後にやるようなシロモノではない。ガンダム以前まで退行してしまっている。ただし、その後の萌えアニメにも通じるお馬鹿恋愛物として見た場合は、なかなかに革命的なストーリー展開ではある。
    一口に言ってしまえば、「ある日宇宙人が攻めてきて巨大戦艦一隻以外人類滅びちゃったんで何とか逃げ回っていたら、”文化”を持たない敵宇宙人がアイドルの歌に洗脳されカルチャーショックを受けちゃってなんだか平和になったね」ってお話し。
    マクロスシリーズは全て、ストーリー上「歌」が極めて重要な役割を果たしている。
    ファーストを含めてその後のマクロスシリーズは全て、個人的にはクズ扱いしてきたが、村上隆の言うように、最新のマクロスFはなかなか良かった。主に日本的萌えや日本的馬鹿を極めている点が。多分こんな発想のある意味平和ボケ的なアニメは日本人しか作れない。

    P124下段L18「コンサート行って「きら」っとやってました(笑)」

    「マクロスF」の挿入歌「星間飛行」。ヒロインの一人でアイドル歌手のランカ・リーの持ち歌。独特の歌詞と曲調のせいか、ニコニコ動画ではMADや替え歌において好んで利用されている。
    で、下は、反乱を起こした異星人部隊を「ランカちゃん」が歌うたって鎮圧するという恐ろしいシーン。いやほんと、そういうアニメなんですよ。ぜひとも北朝鮮とかにもその作戦が通じますように。

    星間飛行 (HD)
    http://www.youtube.com/watch?v=7rXwvvSixrc

    替え歌の一例。歌っているのは本人でもプロでもないよ。ただの素人だよ。BLや腐女子が苦手な人は見ないように。

    【替え歌】モエッ☆BL飛行 歌ってみた【バ行の腐女子】
    http://www.nicovideo.jp/watch/nm3967802


    P193下段L5「映像1――『護法少女ソワカちゃん』」

    【初音ミク】護法少女ソワカちゃん【オリジナル】
    http://www.nicovideo.jp/watch/sm1235394

    詳しいこと知りたい人はこれでも見よう。

    ソワカちゃん疏鈔
    http://sowaka.s-dog.net/

    P225下段L10「映像1――『トムとジェリー』、Heavenly Puss」

    放題「天国と地獄」。僕も一番好きなエピソード。

    トムとジェリー 「天国と地獄」
    http://www.youtube.com/watch?v=lh7x7cO17F0

    で、比較対象として本文に出てくる「カエルのフリップ」。

    Flip the Frog - Soup Song
    http://www.youtube.com/watch?v=Qlq_A2auvDg

    P272下段L11「今大きく世代的に分けて、『ヤマト』『ガンダム』『エヴァンゲリオン』と区別しましたが」

    高村是州がこの直後に発言しているように、まさに「オタクを代表するオリジナルアニメ」。このうちガンダム(79年)とエヴァンゲリオン(95年)は、アニオタ以外でも知的階級であれば一般教養として知っておくべき日本三大アニメ(オレ基準。もう一つは「魔法少女まどか☆マギカ」(11年))。

    P273下段L4「『エヴァンゲリオン』の次のでっかいのはあるとすれば何でしょうか?」

    まどマギです。
    高村はここで『天元突破グレンラガン』(07年)をあげています。これもまぁなかなかに良いアニメではあるしアニオタ的一般教養アニメではあるけど、アニオタ以外にまで一般教養かどうかというと、明らかにそうではない。なんでかというと、ヤマト、ガンダム、エヴァ、まどマギに比べて、非常に狭いヲタだけをターゲットにしているから。オタ向けにチューンされすぎている。三作のように、哲学・思想・文学といったアニメ以外の界隈やビジネス・社会現象にまで発展する余地があまりない。
    ちなみにグレンラガンは、岡田斗司夫が設立したガイナックスが作った。だがグレンラガンの頃には既に岡田はガイナックスを抜けている。
    ここからは個人的異見になるけど、「トップをねらえ!」(88年)だの「ふしぎの海のナディア」(90年)だの、エポックメイキングな名作を送り出してきたガイナックスだけど、グレンラガンも含めて最近はぱっとしない。

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      • 2017.08.14 Monday
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